MLB(メジャーリーグ)の「贅沢税」は、球団の年俸総額に上限を設けることで、資金力の差による戦力格差を抑えるための制度です!
ニューヨーク・ヤンキースやロサンゼルス・ドジャースなどの有名球団が対象となることが多く、ファンの間でも常に注目を集めています!
本記事では、贅沢税の仕組みや、影響、今後の展望についてわかりやすく解説しています!
- 贅沢税の仕組み
- 贅沢税の影響
- 今後の展望
MLBの「贅沢税」とは
MLBの「贅沢税(Luxury Tax)」は、正式名称を「競争力税(CBT:Competitive Balance Tax)」といい、球団の年俸総額が一定の基準額を超えた場合に課される税制度のことです!
超過分に応じて段階的に課税される仕組みとなっています!
目的・背景
資金力のある球団がスター選手を独占することを防ぎ、リーグ全体の戦力均衡を保つことを目的に1996年に導入されました!
導入の背景には、1994年のMLB史上最長のストライキがあります。
当時、オーナー側が「サラリーキャップ導入」を提案したのに対し、選手会が強く反発。
結果として、232日間のストライキとワールドシリーズ中止に発展しました。
その妥協案として導入されたのが、現在のぜいたく税制度です。

NFLやNBAでは「サラリーキャップ(年俸上限制度)」が採用されており、年俸総額が上限を超えることはできません。
2025年の状況
贅沢税の課税対象額(基準額)は毎年見直され、2025年シーズンは2億4,100万ドル(約380億円)に設定されています!
2025年8月時点では、ロサンゼルス・ドジャース(総年俸約4億700万ドル)が最大の課税対象で、贅沢税額は約1億5,800万ドル(約240億円)に達する見込みです。
贅沢税の仕組み
贅沢税の仕組みについて解説していきます!
贅沢税の対象
実際に支払う年俸総額とは異なり、贅沢税の計算では AAV(Average Annual Value:平均年俸) が用いられます!
契約総額を契約年数で割った平均値で、年ごとの支払い額に関係なく同一の金額で計算されます。
- 契約金
- 出来高(Incentive:発生時に加算)
- 選手オプション/球団オプション/相互オプション(状況に応じて計上)
- バイアウト金額(オプション破棄時の補償金)
- ベスティングオプション(条件達成時に保証年数に換算)
- 福利厚生費(保険、食費、移動費など)
- 調停前ボーナスプール(若手選手の活躍報酬制度)
- 出場停止処分(無給期間分が差し引かれる)
- 繰延報酬(将来支払いの割引現在価値で算出)
- トレード(前・後所属球団で按分して計算)
確定タイミングと計算方法
贅沢税の対象となる「年俸総額」は、シーズン終了後に確定します!
40人ロースターに登録されている全選手の契約、ならびにチームが負担する福利厚生などを合計して算出されます。
贅沢税の基準額(閾値)【2023〜2026年】
2023年~2026年の基準額(閾値)は以下のとおりです。
| 年度 | 基準額(閾値) |
| 2023年 | 2億3,300万ドル |
| 2024年 | 2億3,700万ドル |
| 2025年 | 2億4,100万ドル |
| 2026年 | 2億4,400万ドル |
毎年、選手年俸やインフレ率を考慮して上昇しています。
基準額は労使協定(CBA)で定められており、全球団共通です。
課税率(基本税率)
基準額を超過したチームには、以下の税率が課されます。
| 超過年数 | 課税率 |
| 初年度 | 20% |
| 2年連続 | 30% |
| 3年以上連続 | 50% |
一度でも基準額を下回ると「リセット」され、翌年は再び初年度扱い(20%)となります。
追加課税(マルチティア制度)
超過額が大きい場合には、段階的に追加課税が課されます。
| 超過額 | 追加課税率 |
| 2,000〜4,000万ドル | +12% |
| 4,000〜6,000万ドル | 初年度 +42.5%、2年以上 +45% |
| 6,000万ドル超過 | +60%(通称 “Cohen Tax”) |

この制度は、ニューヨーク・メッツのオーナー「スティーブ・コーエン」氏が巨額補強を行ったことから、その名で呼ばれています。
ペナルティ
金銭的な課税に加えて、次のような“戦力面での罰則”もあります。
- 4,000万ドル以上超過:翌年のドラフト1巡目指名順位が10位降下
- 6,000万ドル以上超過:1巡目・2巡目の指名順位がそれぞれ10位降下
※上位6位以内の指名権を持つ場合は、代わりに次順位の指名権が降格。
贅沢税課税対象チームが、他球団のQOを拒否してFAになった選手を獲得した場合
- 国際ボーナスプール:100万ドル減額
- 翌年ドラフトの2番目と5番目の指名権を失う
- 2人目を獲得した場合は3番目と6番目の指名権も喪失
贅沢税の納付先・用途
徴収された贅沢税は、以下の用途で分配されます。
- 約50%:基準額を超えなかった球団への分配
- 約50%:MLBコミッショナー局を通じて、選手年金・福利厚生・小市場球団への収益分配金に充当
- 固定額の約350万ドルが選手福利厚生基金に充当
高額年俸チームにとっては戦略上の大きな制約であり、球団経営や補強方針に直接影響を与える重要なルールとなっています!
贅沢税の影響
ここでは、贅沢税の効果・回避策をわかりやすく整理します。
贅沢税の効果:戦力バランスの維持と財政抑制
- 高年俸チームへの制約
- 税負担の増大により、補強方針やFA交渉が慎重に。
- ドラフト順位降下など、将来戦力の確保にも影響。
- 低年俸チームへの恩恵
- 贅沢税の分配金を受け取れるため、経営を安定化。
- 高年俸球団の補強抑制により、戦力均衡が進む。
- ドラフトで高順位を得やすくなる。

ただし、富裕球団が贅沢税を払ってでもスター選手を獲得するケースもあり、「完全な戦力均衡」には課題が残っています。
贅沢税の回避策:長期契約・後払い
贅沢税を回避するため、球団は契約内容を工夫しています。
- 長期契約でAAV(平均年俸)を抑える戦略
- 契約年数を延ばすことで、1年あたりの平均年俸を下げ、贅沢税対象額を減らす。
- 選手は長期安定収入を得られる「Win-Win契約」。
- 後払い契約による現在価値調整(大谷翔平選手の例)
- 2024年の契約総額:10年7億ドルのうち大部分を2034年以降に支払い。
- AAVが7000万ドル→4600万ドルに引き下げ。
- これにより、ドジャースは贅沢税を大幅に軽減できる。

長期・後払い契約は、今後MLBの規制対象となる可能性も指摘されています。
今後の展望
贅沢税制度の今後の展望について紹介していきます!
贅沢税の課題
贅沢税は資金力のある球団が他球団を圧倒しないように機能しています!
一方で「資金力の乏しい球団が選手を引き留めにくい」という逆の弊害もあります。
強豪球団が贅沢税を支払いながらも高額契約を結び続ける状況が続けば、リーグの戦力均衡が崩れるおそれがあります。
見直しの可能性
現行の労使協定(CBA)(2022〜2026)では贅沢税制度が維持されていますが、2027年以降の新CBA交渉では見直しが議論される見通しです!
選手会は「基準額の大幅引き上げ」を要求しており、一方のオーナー側は「ペナルティの厳格化」や「制度そのものの再構築」を求めています。
サラリーキャップ導入の可能性
オーナー側の一部は、NFLやNBAのように「サラリーキャップ(年俸総額の上限制度)」を導入すべきと主張しています!
サラリーキャップが実現すれば、贅沢税よりも強制力のある形で年俸総額を抑制できます。

選手会はサラリーキャップに強く反対しており、ロックアウトが実施される可能性も示唆されています。
次期CBA(2027〜2031年)では、「贅沢税の維持」か「新たな年俸制度への移行」かが最大の焦点になります。
まとめ
今回は、MLBの贅沢税について以下を中心に紹介してきました!
- 贅沢税の仕組み
- 贅沢税の影響
- 今後の展望
MLBの贅沢税は、球団間の戦力格差を抑えるための重要な制度です。
しかし、資金力のある球団が高額契約を続ける一方で、小規模球団は選手を引き留めにくいという課題もあります。
次期CBA(労使協定)では、基準額の引き上げやペナルティ緩和、制度の透明化などが議論される見込みです。
2027年以降、贅沢税がどう進化するかは、MLBの競争バランスと経営の未来を左右する大きな焦点となります。
本記事を最後までお読みいただきありがとうございました。


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