MLB(メジャーリーグ)でケガをした選手に対してよく耳にする「故障者リスト(IL)」という制度をご存じですか?
故障者リスト(IL)は選手が病気やケガにより試合に出場できなくなったときに使われる制度です!
過去には大谷翔平選手やダルビッシュ有選手など、日本人選手も利用しています。
本記事では、故障者リストの仕組みや流れ、事例、日本の制度との違いまで詳しく解説していきます!
- MLBの「故障者リスト(IL)」の仕組み
- 日本人選手の事例
- 日本との違い
故障者リストとは
概要
故障者リスト(正式名称:Injured List/略称:IL)は、MLBで選手が怪我や病気により試合出場が困難になった際に一時登録される制度です!
- 2016年までは、15日間故障者リストが使用されていた。
- 2017年から10日間故障者リストに変更。
- 2018年シーズンまではDisabled List(DL)と呼ばれていたが、「障害」という語の誤解を避けるため、2019年から現在の名称に変更。
- 2020年から投手が15日間、野手が10日間に変更。
選手がILに登録されるには、公認の医師による客観的な診断が必要です。
故障者リストに登録中はMLBの公式戦には出場できないため、治療やリハビリに専念することになります。
故障者リストが存在する主な理由には、以下が挙げられます。
- 選手の保護:無理な出場を防ぎ、治療と回復に集中できるようにするため。
- チームの戦力維持:ILに登録することで、該当選手をアクティブロースター(26人枠)や40人枠から一時的に外し、代替選手を登録できるため。

不調による成績不振や戦略的な理由だけでは故障者リストに登録できません。
故障者リストの仕組みと流れ
故障者リスト(IL)の具体的な種類と仕組みについて紹介します!
選手は、精密検査を受け、公認の医師による客観的な診断によりILに登録されます。
故障者リストは主に3種類あります!
種類 | 最短 登録 期間 | 対象選手 | 26人枠 (アクティブ ロースター) | 40人枠 | 備考 |
---|---|---|---|---|---|
7日間IL | 7日 | 脳震盪の疑い のある選手 | 外れる | 残る | Concussion List。 特例として使用。 |
10日間IL | 10日 | 野手 | 外れる | 残る | 最も一般的な軽傷対応。 |
15日間IL | 15日 | 投手,二刀流選手 | 外れる | 残る | 2020年から投手専用 として導入。 |
60日間IL | 60日 | 重傷を負った選手 | 外れる | 外れる | 長期離脱者向け。 40人枠からも外れる。 |
ロースター枠に与える影響もあり、新たなメジャー契約選手の登録や復帰時には26人枠の再調整(降格・DFAなど)が必要となります。
また具体的なルールは以下のとおりです。
- 15日間ILから60日間ILへの移行は可能だが、逆は不可。
- 登録は、選手が最後に出場した試合の翌日まで遡って適用可能。
- 復帰のルール・プロセス
- IL登録期間が終了すれば復帰可能(即出場しなくてもOK)。
- 復帰には、球団がアクティブロースターに再登録する必要がある。
- リハビリとしてマイナーリーグでの出場は可能。
(調整できる期間…野手:最大20日、投手:最大30日)
- 年俸と契約状態
- 登録中もメジャー契約は有効なため年俸は100%支払われる。
- FA取得条件や年俸調停権にも影響する「メジャー在籍日数(サービスタイム)」も加算され続ける。
- シーズン終了時には、60日ILの選手は再び40人枠に戻す必要がある。
選手の健康を守るだけでなく、球団に柔軟なロースター管理の手段を提供する仕組みとして、MLBにおいて非常に重要な役割を果たしています!
他のリストについて
MLBでは故障者リスト以外にも、アクティブロースターから外れ、代わりの選手を補充できるリストが存在します!
リスト名 | 主な目的 | ロースター枠への影響 | 備考 |
---|---|---|---|
父親リスト (Paternity) | 出産立ち会い (最大3日) | 26人枠:外れる (代替可能) | 2011年導入。 最大72時間 |
忌引リスト (Bereavement) | 家族の不幸 (3~7日) | 26人枠:外れる (代替可能) | 登録期間は3~7日間 |
制限リスト (Restricted) | 出場停止・ 私的離脱 | 26人枠:外れる 40人枠:外れる | 無給扱い。 薬物違反・私的理由など |
育成リスト (Development) | マイナー調整 ・育成 | ロースター枠から外れる (マイナー内) | MLB契約選手・ 負傷者は対象外 |
いずれも「一時的な離脱」を補うため、代替選手の登録が可能ですが、制限リストは厳格で、選手の給与・登録状況に強く影響します。
父親リストの詳細については以下の記事で紹介しています!
日本人選手の事例
過去に故障者リスト入りした日本人メジャーリーガーの例を紹介します!
選手名 | 年度 | チーム | リストの種類 | 理由・備考 |
---|---|---|---|---|
大谷翔平 | 2020 | エンゼルス | 10日間IL | 右肘の故障 |
大谷翔平 | 2023 | エンゼルス | 10日間IL (終了後手術) | 右肘靱帯損傷 2度目の トミー・ジョン手術 |
千賀滉大 | 2024 | メッツ | 15日間IL →60日間IL | 右肩痛・左ふくらはぎ負傷 |
ダルビッシュ有 | 2021 | パドレス | 10日間IL | 腰・股関節の張り |
ダルビッシュ有 | 2024 | パドレス | 15日間IL →制限リスト | 首の張り →家族事情により 無給での制限リスト入り を申し出 |
鈴木誠也 | 2023 | カブス | 10日間IL | 左脇腹の張り |
日本との違い
現在の日本プロ野球では、MLBのような故障者リスト制度は存在しません!
ただ、1992年から1996年の5年間だけ故障者リスト制度が試験的に導入されていました!
この制度では、全治2か月以上と診断された選手を故障者リストに登録し、その分の補充を認めるという運用がなされていました。
しかし、1997年に一軍40人・二軍30人という選手振り分け制度が撤廃され、現在の出場選手登録制度(28人制)が導入されたことにより、制度の柔軟性が増し、故障者リストの必要性が薄れたため採用されませんでした。

日本では復帰まで長期間要する病気・ケガの場合、育成契約に移行する流れが出てきています。
まとめ
今回は、MLBの故障者リスト(IL)について以下を中心に紹介してきました!
- MLBの「故障者リスト(IL)」の仕組み
- 日本人選手の事例
- 日本との違い
MLBでは故障者リスト(IL)が選手保護の仕組みとして整備され、10日間・60日間など状況に応じた柔軟な対応が可能です。
一方、日本プロ野球(NPB)には現在、MLBのような故障者リスト制度は存在しません。
過去には導入例もありましたが、出場登録制度の変更で廃止されました。
故障者リストの仕組みについて理解することで、選手の移籍やマイナーからの昇格などの背景を知ることができるでしょう。
チームのロースター枠への影響にも注目しながら、故障者リストに関する動向をチェックしていきましょう。
本記事を最後までお読みいただきありがとうございました。
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